30年ぶりの返信

 

新しいカードゲームセットの名称『Ars Combinatoria』は
ラテン語なんですが、その言葉を初めて知ったのは
かれこれ30年ほど前でした。
憧れの英文学者・高山宏さんの『メデューサの知』所収の

『カルヴィーノのアルス・コンビナトーリア』という評論が

その言葉との初対面。
 

 


で、まぁ、当時はなんのことやら、さっぱりわからず(笑)

ほぼ呪文ですよね>カルヴィーノのアルス・コンビナトーリア

この本の目次には、他にも
『エンキュクリオス・パイデイア』とか

『パラドクシア・アナモルフォティカ』とか

覚えるだけで強くなった気のするタイトルが
たくさん並んでいました。
 


 

まだネットのない時代でしたから、広辞苑や英語の辞書、

『現代用語の基礎知識』なんかを総動員して

それらを一所懸命に解読したものです。
 

とはいえ、この本のおもしろさはハンパなくて、

ぼくが「人生の一冊」を選ぶとすれば
間違いなくこの本です。
 
 


 

内容はと言えば、「言葉」にまつわる

おもしろいエピソードが目白押し。
 

くだんの『カルヴィーノのアルス・コンビナトーリア』は

イタロ・カルヴィーノのという小説家の方法論が

非常に組み合わせ術(Ars Combinatoria)的であると

指摘した評論です。
 

他にも、言葉が正確じゃないから行き違いが起きるんだ

ということで、
物に対して一対一で対応する言語体系を
つくろうとした
奇人たちの話とか。

同音異義語を徹底的に潰そうとしたわけですね。
 
人
類が言葉にたくしてきた夢と熱意と憧れが

その限界の悲しさとともに、
おもしろおかしく語られた
破格の名著でした。
 
 


 

実は、ぼく、

一度だけ高山さんに直接手紙を書いたことがあります。

初めて個展を開いた際、

案内状に著作からの引用をさせて欲しい旨の打診でした。

たしか当時勤務されていた都立大学宛に出したと思います。
 


 

高山さんからは申し出を承諾するとともに
ぼくの略歴を見て、
自分の母の出身が広島の呉であると
書かれた葉書が
返ってきました。

その葉書は、
呉の実家の机の上に今でも飾ってあります。
 
 


 

そんなこんなから、かれこれ30年が経ち、

ようやく「作品」の形で返信ができる。

ぼくにとって、『Ars Combinatoria』には

そんな思いが込められているのです。
 

そして、
争いを避けるために言葉に願いをたくした
先人たちの夢を、

ぼくもまた追いかけている。
そんなタイトルのカードゲームです。

 

 

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ