長谷部和美さん

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長谷部和美さんからお引き受けした仕事は、ちょっと変わっていました。
シンボルをデータにするのではなく、アクリル画にして欲しいとのご依頼です。

例によってアンケートにお答えいただいた後、メールでやりとり。そのあたりは普通の進行でした。
ただ、絵具で描くとニュアンスが微妙になるため、大雑把なところからラフ案の擦り合わせを行いました。
ご自身の特徴として強い二面性を上げられていたので、それを表すべく、明暗のくっきりと分かれた画面を想定。
真ん中に円を描き、そこでは明暗の角度を変えて、両者一体となって一つの図形(=性格)が見えるイメージです。

それに対して、「円は円満に通じるのでもう少し違った形が良い」あるいは「明るい部分にも絵具の飛沫が散って欲しい」などの要望がきました。
秀逸だったのは「明朝のたおやかでやさしい丸みとゴシックの力強くもちょっと可笑しい直線」の対比が欲しいという表現。才媛です。

 

さて、最初のラフをお出しして少しやりとりした後、ご本人からこんなご提案が来ました。
「突然思いついたのですが、日時計のような棒で光と影を織りなす二面性はどうでしょうか?」

良いのではないでしょうか。
大きなテーマは異なる要素の融合と考えていたので、表現方法はそれこそ山のようにあるはず。
ご本人が納得されるのが何よりです。

というわけで、あらためて下のラフ案をお出ししました。
タッチがちょっとルネサンス期っぽいですね。
そこんところ、いい感じです。

 

02

 

 

ラフを踏まえて描いたアクリル画がこちら。
大きさはハガキサイズです。

 

03b

 

ぼくが持っている長谷部さんのイメージ色は赤紫だったのですが、「寒暖の色の二面性」も出して欲しいとのオーダーがあったため、青と赤に分けることにしました。
かつ「もし寒暖色両方を配置するとしたら、グラデーションのような形ではなく、アクリルの特性を活かした何かは考えられますか?(わたしはこのあたり、まったくわからないので、ごめんなさい。イメージは写真の上に描き殴っているリヒターです・笑)」とのご要望。
というわけで、青い影の中に赤い筆触が跋扈する感じにしてみました。

それから「白の方にも飛沫が散って「侵犯」(=融和)していてもらえるとうれしいな」というご要望もあり。これも画面に反映しました。

なお、スキャン画像なので、2点ほど見え方が異なります。
・赤はここまで派手には見えていません。
・けっこう銀を使っています。

それから、左上にくるんと見えている形は描いている途中で追加したものです。
長谷部さんの愛らしい感じが顔を出すイメージ。
ご本人はそれに重きを置いていらっしゃらないはずですが、お会いする人の第一印象はそうではないかな、と。よって、画面の左上にそれを持ってきました。

 

以上を踏まえた長谷部さんの回答は、以下のようなものでした。

「面白いですね、素敵です。
ふたつの試みをお願いできますか?
1、赤と黄味の面積量(位置?)を入れ替えられますか?
また、円柱にアクリルをかけてもらうことは可能でしょうか?
2、少し大ごとなのですが、円柱の輪郭を空間に融和させることはできますでしょうか?
無理難題ばかりすみません。」

赤の部分の黄色への変更は、単純に黄色がお好きだからとのこと。
通常、ぼくはあまり黄色を使わないのですが、そのあたりが二人で相談しながら作ることのおもしろさだと思います。

しばらくすると、さらに追伸が入りました。
「いま急にテーマがわかりました。
二面性、文字(後者はよくわかりませんが)の融和ということを本日のラフで考えてみたとき、平面というレイヤーと立体というレイヤー(仮視)が融和する、レイヤーのない世界を欲しているのだと思います。」とのこと。

それに対してぼくは
「そうですね。繊細さと荒さの共存で、明朝とゴシックの融和を、と考えていました。平面と立体の融和も了解です。」と回答し、「さすがアーティスティックカウンセラー!」とのお褒めの言葉をいただきました(笑)

というわけで、それらの修正を反映したのが、下のヴィジュアルです。ここからさらに円柱を細くしていきます。

 

04

 

 

通常、作品ができあがってからお披露目するものですが、この作品は(ご本人に許可を得た上で)描く途中をブログにアップしていきました。それは、なかなかおもしろい試みだったと思います。
判断する基準が「絵画として良いかどうか」よりも「その人らしいかどうか」に置かれているので、けっこう自由な意見が出てきたんですね。

もしかしたら、これは絵画というジャンル史上、ものすごく画期的なことをやっているのかも知れません。
なぜなら、絵画くらいスタティックで、しかめっ面をして見るものもないからです。
そうして完成したのが、下の画面。とても気にいっていただけました。

 

 

06

 

tsugi

 

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