秋山賢司さん

最初にメールで簡単なやりとりをした後、事務所に足を運んでいただき、かなり濃密なインタビューを行いました。ほぼ2時間近くだったでしょうか。
と言っても、問題があったからではなく、とても楽しかったから。話題は哲学や美学から生態学におよび、マンガの話なども交えて大いに盛り上がりました。

秋山さんは企業のコンサルティングをされている方で、とても博識。
さなぎの中で幼虫は一旦ドロドロに解け、細胞の完全な再構成によって蝶になることを教えていただきました。そして、その時「何も足されていない」不思議についても。いや、感動しました。

おもしろかったのは、自分がサブキャラクター的であるとの認識です。
3人兄弟の次男ということで、アカレンジャーに憧れるアオレンジャーという立ち位置。ガッチャマンで言えば、コンドルのジョー。矢吹ジョーではなく、力石徹だと。年齢が近いこともあって、例え話がドンピシャでした。

そんなこんなを踏まえて、2点のラフ案を作成。
A案は、イニシャルのAをベースに、行く手を照らすランタンをイメージしました。コンサルティングとして、クライアントの将来を示すシンボルです。
一方、B案は「青色」に焦点を当てました。視覚細胞(RGB)をデフォルメし、青色のグラフを強調する構成。青を青のまま(何も足さないで)赤より前に出すことを考えました。

 

akiyama

 

さて、ラフ案2点を提示したところ、秋山さんからは次のように返信がきました。

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この2つの案、悩みます…
A案は、シンプルでストーリーがあるのが楽しい。自分にも相手にも楽しい♬
B案は、自分の深層を表現している気がする。ただこの後の展開が読めないので不安も混じっている感じだし…

スギオカさんから見て、今の私はどう写っていますか?

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と問われ、ぼくは「秋山さんは背中を押して欲しいんだろうな」と思ったので、
次のように返信しました。

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わたしから見て秋山さんは「Bを選びたいのだけれど、どうなるのかわからないので不安。でも、そっちにチャレンジしてみたい」という感じではないかと思います。

その意味で、B案は深層心理の表現であると同時にまだ見ぬ未来なのだと思います。
秋山さんがこれから進めていきたいと思っていらっしゃるサービスにもそれはちょうと見合っているのではないでしょうか。

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それに対し、秋山さんからは次のような返信をもらいました。

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B案でお願いします。

追記;
おかしい&面白い。
私は多分、スギオカさんがなんて言って来るかわかってた気がしたし…
言い換えると、わたしが言わせている気もします。
(それをすーっとこなしてくれるスギオカさんの美しさと深さにある種の「嫉妬」と「畏れ」さえ感じます♡)
かっちょいいなー。

ある意味、スギオカさんがわたしかもしれません…

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いや、嬉し恥ずかし、楽しいやりとり(笑)
無事にB案で行くことが決定し、以下のシンボルを作成しました。
「スギオカ会心の作!」と思ったのですが、それが長い旅路の始まりになろうとは…。

 

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理想的な進行に見えた秋山さんのシンボル作成でしたが、データ化を行ったところから状況が一転します。
出来上がりを見た秋山さんからの感想は、以下のようなものだったのです。

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頂いたシンボルをしばらく眺めてみました
誤解を恐れずにお伝えすると、
感覚としては…「何も感じない」でした。

考えとしては…
・シンボルに見えない(=図形に見える)
・それでも今の自分を表している感じもする。
・ただ,これだと人に伝わらない?
・何を伝えたいの?人見せることを前提に作っている…?

う〜ん、よい意味で混乱しています。
その一方で,何かが生まれそうな気配もあります。
だた、この後どのようなリクエストをスギオカさんに出せばいいか
思い浮かびません。

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「ありゃりゃ…」という感じでした。
手描きのラフにはある種の暖かさがありますから、それがなくなったところでは、確かに機械的なグラフに見えてしまう可能性はあります。
にしても、また極端な… という感じでした。
しかし、クライアントの納得感はとても大切です。
ぼくは以下のような返信をしました。

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ここからの選択肢としては、大きく
・やっぱりA案
・もう少し人に説明できる形にする
・現状案を理解するものを自分の中に作っていく
だと思います。
上から順にソフトランディングであり、下に行くほど修行に近くなる感じ。
が、ここはあせらず行きませんか?
どう進むかそのものを丁寧にやりとりさせていただきたく。

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あわせて、話があまりにスムースに進んだので、自分の好みに引き寄せ過ぎていたかも知れないと反省。
秋山さんが他の人に説明できるよう、RGBの3色を明示し、その中でBlueに重きが置かれていることを端的に示す形を考えてみました。

 

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進行は想像もしなかった迷走を始めますが、ぼくの方から歩み寄っただけでなく、秋山さん側でも真摯に考えを進めてくれていました。
その意味で、このサービスはやっぱりクライアントとアーティストの共同作業であるわけです。
以下は、秋山さんからのメールです。

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やっぱり私がシンボルロゴとは何なのか掴みきっていなかった(仲良しになってなかった)。
シンボルロゴとは、自分を素直に投影しているもの。だとするなら今の自分を投影するのを拒んでいたのかな?
「相手に起こしたい結果」をシンボルロゴに託していただけだったのか。って。

そんなことをふと思いながら、改めてロゴを見たら「今の自分だな~っ」て、ふつふつと感じてきました♪
今回のシンボルロゴは、相手に見せるものではなく「今の正直な自分に還るため」に活用する!と決めました。

そこで少し加えてもらいたいのは
・山の青の色をもう少し「濃く」したい。
・波長の形を残しつつ少し「山」の形に近づけて欲しい。

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ということで、さらに手を加えたのが次のイメージです。
秋山さんのイニシャルである「A」も意識しました。

 

 

段々と秋山さん自身の納得度は上がっていった感じで、さらに

・山の形をもう少し原型に近づけて欲しい(Aは意識しなくてOK)
・外のフレームを四角ではなく、丸にしてみる
・波長の頂上にあった白丸を戻す

というリクエストが返ってきました。
結果、出来上がったのが下図です。

 

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しかし、これを見た時、ぼくの中では別のスイッチが入りました。
「うわっ。これじゃ、普通の(=多数決で決まるような)ロゴじゃない…。
これを作ったとは胸をはって言えないなぁ…」と。

お客さんのリクエストに応えるのがあるべき仕事の形だと思いますし、
ようやく終わりも見えてきたわけですが、
ここは「ゆずる」ところじゃないな、と。
決別の可能性も念頭に置きながら、ぼくはハッキリ「これじゃない」と
伝えることにしました。

もし、提出した案を秋山さんがものすごく気にいった場合は、折り合いがつかなくなるかもなぁ…と思いつつ、生まれてしまった違和感を説明しました。

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ご希望にそった形で修正をしてみました。
フレームを円にして、山型をもとの波長の感じられるものに直し、青い山の丸も戻しました。
結果として、バランスの取れたものになったと思います。

ただ、今度はぼくの方がこれでいいのかなぁ…、と感じています。
いや、悪くはないですし、秋山さんの要素も感じられます。
しかし、このシンボルって、他の人にも使えそうな気がするんですね。
つまり、秋山さんの中の「普通」の部分を表現したものだと。
さらに言えば、ぼくじゃなくても作れそうなんです…。

あらためて、最初の案を添付させていただきます。
今までのやりとりは、きっとこの間に存在するものの系譜だったのだと思います。

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そして、せめて3原色が主張するチープな感じを解消すべく、モノトーンにさせて欲しい旨を伝えて、作例を添付しました。

 

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その案に対する回答がこちら。

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新しいロゴありがとうございます!!
とてもわかりやすくロゴっぽいですね!!
スギオカさんが違和感を感じていたのは,3色のエネルギーがどれも強すぎて
調和?がとれないとこにあったのですね。
なんとなくわかります。

その一方で、これをみたあとにスギオカさんが一押しのロゴを改めて見ると…
なぜか、こちらの方が魅力を感じます。理由は全くわかりませんが。

不規則なエネルギーが規則的にあるというか…
なんか長い間見ていたくなる。そんな感じがします。

なので今回はこちらをベースに仕上げてもらってもいいでしょうか!!!
二転三転して大変申し訳ありません…。

仕上げのリクエストは特にありませんが、強いて言うなら
・形があとすこしだけ山っぽいほうがいいかな?
・小さくした場合,全体的な線が細くなるけど大丈夫かな?
という感じです。

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心配した最悪の展開には、ひとまずなりませんでした。
そして、ようやく着地も見えてきた感じです。
というか、最初の案に近づきつつあるのは喜ばしいこと。
ご希望にそった修正データを作り、以下の説明を添えて送信しました。

 

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魅力というのは、ある種の偏りです。
捨てるものがハッキリしていて、「これだ」という覚悟が強ければ強いほど、出てくるものも明晰で強靭になります。

秋山さんの場合には、非常に強いものを「青」色に感じました。
ですから、それを受けて知恵をしぼったオリジナル案は他の誰かが作れるものではなく、秋山さんとぼくだからこそ
できた「オリジナル(=根源的なもの)」だったと言えます。

いろんな要素のバランスがいいのって、(実際の生活ではそれはとても大切なことですが)作られるものとしては「可もなく不可もなく」になってしまうんですよね。

敢えて言えば、ぼくの方も秋山さんの社会性を考えて3色提示の余地を残したことが進行上の大きな失敗でした。
そこ、もっとガンと主張するべきだったかも知れません。

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その説明に対して、秋山さんから返信がきました。
メールのタイトルは「すべてが“完璧”でした」。
最終的に選択されたのは、最初にご提示したシンボルだったのです。

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スギオカさん

おはようございます。
自分が見えました。

 

ƒvƒŠƒ“ƒg

 

 

このロゴは今の私そのものです。

質の高さも,
強い心も
希望も

不完全(アンバランス)さも、
弱い心も
不安も

全てが完璧なんです。

そしてこのプロセスさえも
『完璧』でした。

言葉にしたいことが、次から次に溢れてきます。
言いたいことがたくさんあります。
ただ,今それを言葉にしてしまうと,この感覚が薄れてしまいそうです。
近日中に言葉にしますので,聞いてやって下さい。

今の気持ちは,すべてに対する「愛おしさ」で溢れています。

秋山 賢司

これさえも「私」でなく記号(シンボル)なんですね。

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というわけで、迷走的だったフライトは大きな弧を描いて無事に帰還。
最初に出した案への全面的な理解をもって、すべてが解決しました。

一見徒労だったように思えますし、工数的なことを言えば、そりゃ大変でした。
が、最初は何にも感じられなかったものが、最終的に「愛おしい」とまで思えるようになったのですから、これはもの凄い「体験」です。
さらに言えば、ご自身の名前に関してまで見方が変わったわけです。
本サービスの提供するものが希有な体験である以上、これは非常に示唆的なサンプルケースだったと言えます。
経緯をオープンすることに快諾いただいた秋山さんに、多謝!

見えるものは、それが持つ文脈や見る側の知識や態度によって姿を変えます。
見えないものを身にまとう感じでしょうか。
青い街は、それを楽しむお手伝いをしています。

 

tsugi

 

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